介護特集

TOWN介護 FEATURE01



特集:医療法人 あづま会



医療法人あづま会の特徴

 FEATURE01 特集:医療法人 あづま会 大澤 大井戸診療所の開業は昭和62年、私が34歳の時です。精神科・内科を標榜し、認知症のひとを主体とした在宅医療にあたっています。重度痴呆患者デイケア(※1)を開始するために、平成3年に医療法人格を取得し、医療法人あづま会を設立しました。その当時、重度痴呆患者デイケアの敷設基準が厳しく、全国で10番目、診療所に至っては全国で初めてのことでした。後に老人デイケア、そして介護保険施行後は通所リハビリテーションに変遷していきましたが、一貫していることは「認知症のひとを入院させない」ということ。これが基本的なコンセプトです。
 当院では年間130名前後の認知症や認知症が疑われるひとを新患として診てきました。その多くは認知機能低下(中核症状)、BPSD(行動・心理症状)が受診理由として挙げられます。特にBPSDがあると精神科病院入院を検討しなければならないこともありますが、極力その事態を回避しようと取り組んでいます。法人内に通所リハビリ、訪問看護、訪問リハビリ、

グループホーム、2つのデイサービス、2つの居宅介護支援事業所、地域包括支援センターを配置し、開設から現在に至るまであえて病床は持っておりません。そのため法人内外の多職種と強固な連携を図り、地域包括ケアシステムという枠組の中で機能強化型在宅療養支援診療所として、24時間のサポート体制を敷いています。  認知症は今の医療では治せません。初診から看取まで寄り添いたいという思いで向き合っています。その人らしく居られるには、やはり自宅や地域で暮らすことです。それによって、個々のニーズに応えることができ、生活の連続性も保たれます。また、その人のQOLを向上させるとともに、ご家族も含めて支えていく必要があります。そのためには、多職種が連携しながら関わっていくことが求められるわけです。法人内にはケアマネジャーが10名ほど在籍しています。それはケアプランを作成できる人材がいないと包括的な関わりができないと考えるからです。  認知症のひとを見守り、支える仕組みができれば、どんな人でも支えられるでしょう。これが徹底できれば地域包括ケアが見えてくるのではと思います。
※1:「重度痴呆患者デイケア」は当時の表記で、現在は「重度認知症患者デイケア」

認知症のひとを支えていくための取り組み

竹田 ケアプランを立てるにあたって、そのひとの思いがきちんとプランに乗っているかということをケアマネジャーは重要視しなければなりません。その思いを見つけ出していくことはアセスメントに尽きるのですが、認知症のひとが自分の思いを自分の言葉で表現するのはすごく難しいことだと思います。  大井戸診療所では平成25年からもの忘れ外来を実施していますが、その事前調査をケアマネジャーがお手伝いしています。問診票の中には、診察に活かされる項目が決まっていて、聞き取りを繰り返し行うことで、アセスメント技術を向上させています。自分で拾い上げた情報をもとに院長が診察をし、その内容に対して不足があった場合、ここはもう少し広げた方がいいよというアドバイスをもらえます。これは非常に私たちの力がついていく一つの取り組みになっています。  私たちケアマネジャーは毎月、各部署が参加する会議を開いて事例検討会を行っています。ケアマネジャーが気付かない部分に対して、看護師が身体面のアドバイスをくれたり、リハ職からの視点で助言をもらったり、各セクションから専門的な意見が聞ける場になっているので、ケアマネジャーもスキルアップでき、法人全体がその事例に対して支援策を高めていく会議になっています。
服部 多職種連携による地域包括ケアシステムの中で、認知症に関わるドクターや訪問看護、認知症初期集中支援チームなどがありますが、やはり核となるのはかかりつけ医です。なぜか

というと、行政などによる検診にかからない独居老人はたくさんいます。 また今年度から、法人内の通所事業所にケアマネジャーが研修という形で訪問しています。そこでケアプランに沿った支援がきちんと行われているか、現場スタッフからケアプランに対する提案はないかというやりとりをさせてもらったり、ケアマネジャーが現場に行くことでその通所のセクションに何か課題があるのではないかということを、研修で学び、それを報告させてもらい、意見交換をして改善につなげるということを行っています。
松村 実際に私が管理しているデイサービスにケアマネジャーが来て、ケアプランに沿った介護支援をしている現場を見てくれて、一緒にケアプランの見直しがタイムリーにできるというのは、すごくいいことだと思いました。今後も継続していきたいです。

認知症のひとを支えていくための取り組み

在宅医療のための各種連携について

山﨑 当法人の訪問看護では半数以上が認知症のひとです。BPSDがあって家族が手を付けられない、何年もお風呂に入っていないなど、どこのサービスも利用していない認知症のひとのところへ行くこともあります。お風呂に入れたり、髪を切ったり、そういうところから生活を支えていき、院長が診察後、訪問看護が伺い関係性を作ったうえで、通所サービスにつなげるという独自のやり方です。初めは「帰れ」と鍵を閉められたこともありますが、顔なじみになって関係ができてきたら、通所への送り出しを支援して、うまくつながれば訪問看護はそのままフェードアウトします。また通所が難しくなり医療ニーズが高くなったら訪問看護を再開し、最期は自宅でとなれば看取りまで行います。最近では外部のケアマネジャーから「通所に行きたいけれど行けなくて」という依頼が増えてきて、認知症訪問看護が広まってきた実感があります。 また看取った後には「看取りケア確認シート」を用いて、介護職員や地域の施設のレベルアップを図ろうという取り組みを行っています。看取りまでの流れ、対処法、介護職の方の行動などを振り返ること

で、怖がっていたスタッフも次の看取りの時は自信を持てるようになり、スタッフ教育になっています。  連携の手段としては、メディカルケアステーション(MCS)という医療介護専用SNSを活用しています。医療と介護、患者さんとそのご家族をつなぐコミュニケーションツールです。往診や訪問看護に行った情報や、デイサービスでの状態などの情報を発信すれば、即座にコメント返信され、もし傷などがあれば写真も載せられ、携帯電話やパソコンですぐに情報共有できます。内部ではすでに浸透していて、ケアマネジャーとは頻繁にやり取りをしています。 それから、アロマセラピーは10年以上前から取り入れています。デイサービスやグループホームに行ったり、講演依頼もあってアロマセラピーの普及にも力を入れています。ターミナル期の人であれば、むくみが出たり拘縮した時に、アロマセラピーで症状を和らげることができます。家族にアロマセラピーを教えて、亡くなる人に触れていただくとさみしい思いをせず、安心感が得られます。アロマセラピーはコミュニケーション技術の一つのアイテムとしても良い成果を上げています。

超高齢化社会へ向けてやるべきこと

大澤 在宅医療に絡んで、大変なのは救急医療です。救急車が頻繁に呼ばれて救急隊も、受け入れる救命救急センターも疲弊しています。これからやらなければならないことは、急性期を作らないことです。そして安定した時期を持続させることです。何よりいざという時の対応に関して、日頃から話し合い、共通認識を持っていくということがとても大切です。
松村 マンパワー不足が社会問題になっていますが、サービス事業所のスタンスとしては、限られたマンパワーで優先順位を定めてケアプランの整合性をより詰めていき、最適化を進めて

いくことが重要ではないかと思っています。私は介護福祉士と理学療法士の資格を持っていますが、今後、地域の人に向けた介護予防教室を充実させるなど、高齢者だけではなく、ご家族全体を支えることが当法人に求められることと思っています。  また、当法人では月に一度、外部のコンサルタントを招いて、スタッフの研修、マネジメントをする立場の人の研修にあたってもらっています。人づくりと組織づくりで当法人がレベルアップを図り、地域の中で他の介護事業所、医療機関とともにいいケア、いいキュアを目指していきたいと思っています。