介護特集

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特集:エムダブルエス日高 太田デイトレセンター



エムダブルエス日高が運営する太田デイトレセンターでは、通所者に同施設が所有する38台の介護送迎車両を利用して、自社開発の送迎システム「福祉Mover」にSAVS(スマート・アクセス・ビークル・サービス)の技術を連動させた配車サービスを提供しています。このサービスは、通所者が通院や買い物などで通所日以外に外出したい時に、スマートフォンを使って送迎中の介護送迎車両を呼び出し、相乗りすることができるというもの。その画期的な仕組みや現状の課題、今後の展望について北嶋史誉社長にインタビューしました。 株式会社エムダブルエス日高 代表取締役社長 北嶋史誉さん



  利用者さんの声

福祉Mover+SAVS 導入の経緯

 デイサービスの送迎業務が残業の温床になっていました。明日の送迎計画書の作成、1人ひとり条件の違う利用者さんの配車分けなど、手間の掛かるそれらをシステム化し、働き方改革の一環として職員を楽にしてあげようと思ったのがきっかけです。福祉Moverを導入してみたら、驚くほど効率的になりました。そこで手が空いたぶん、福祉送迎車に相乗りをさせてあげようと考えたんですね。ただ、相乗りをさせるのには人工知能を使わなければならなくて、調べているうちに函館に本社を置く未来シェアが開発したSAVSを見つけました。それで押しかけ女房的に先方の社長に話を聞いてもらったら、「それはすごい」と賛同していただいて、ぜひAPI連携しましょうと話がトントン拍子に進みました。昨年の11月から今年2月末まで総務省の実証実験を経て、サービスを継続しています。ここ太田デイトレセンターを「福祉Mover+SAVS」のショーウインドーにしたいと思っていて、全国から引き合いが多く、行政の方々や大手商社、そして、医療法人も見学に来ています。ぜひ体験してほしいですね。

利用者の非通所日のお出かけをサポート

 現状は要支援、要介護度の認定を受けた利用者さんに限定しています。利用方法はあらかじめスマートフォンの専用アプリで病院、ショッピングモール、ドラッグストアなど、よく行く場所を5カ所まで登録してもらいます。出かけたい時にアプリで出発地と目的地を指定すれば、AIが送迎中の車両の中から最適な車両を判断し、ドライバーに指示が届くと迎えに来てくれて相乗りするという仕組みです。送迎車は車いすにも対応し、ご家族も同乗できます。ドライバーは福祉車両の扱いや介助にも慣れているので昇降時もスムーズです。利用者さんのスマホ画面には車両番号と迎車予定時刻が表示されます。さらに

この7月からコールセンターを設置して、スマホをお持ちでない利用者さんでも携帯電話で移動サービスが使えるようになりました。  この背景として、週7日間のうちデイトレセンターに2日通ってリハビリをしても、残り5日を家で引きこもっていてはADLは改善しません。非通所日に外出して買い物をしたり、孫に会いに行けば1000歩くらいは歩くでしょう。間違いなく機能訓練になります。非通所日をリハビリにアレンジできれば、より施設の付加価値も高くなるでしょう。非通所日の差別化という目的で福祉Moverを導入したいという事業所も出てくるかもしれないですね。

世間を賑わせている高齢者の自動車事故

 高齢者の事故は非常にタイムリーな話題として追い風になっているのも事実です。免許証を返納するだけでは問題解決にならないので、日常生活に困らない社会を作らないと、返納率も上がらないし事故も減らないと思います。ただ返納を促すだけではなく、代わりとなるものをしっかり整備しなければなりません。電車やバスは自宅には来てくれないですから。ドアトゥドアのタクシーもドライバーが高齢化していますね。若者のな

り手も少なくタクシーの数も減車しています。高齢者も免許証返納者も増えていくのにドアトゥドアのインフラが下がっていく。そうすると公共交通、タクシーに次ぐ第三の交通網を今から作っておかなければ。それで第三の交通網は何か?となった時、それは福祉Moverが担うのではないかと考えています。この仕組みが高齢者の交通事故を減らすひとつの特効薬になるかもしれません。

企業と行政の共同を目指して新たなインフラに

 今後、他社が運営するデイサービスの送迎車も相互に利用できるようになれば、より広い範囲で相乗りサービスが展開できます。山村過疎地域ではタクシーは全然走っていないけれど、デイサービスの送迎車はたくさん走っているわけですよ。シートは空いているのだからもったいない。今すぐあるリソースを使ってライドシェアする、これからはシェアリングエコノミーの時代でしょう。  システムを導入するにあたり、SAVSは人工知能のメンテナンス費用がかかります。これらを行政の財源で賄えるように働きかけていきたい。そうすれば、協力してくれるデイサービスが増えていくと思います。すでに複数の自治体と検討を進めていますが、例えば高崎、前橋、玉村、伊勢崎、太田の施設が次々とシステムを導入すると面でつながります。そういう展開を目指して、まずは自動車保有台数1位の群馬県から変えていきたいですね。

介護業界は3Kの職場と言われて人気がありません。でも、交通弱者の移動手段としてひとつのインフラを担い、地域の社会的問題を解決しているのが介護業界となれば、業界全体の存在感が増して、働くスタッフのモチベーションアップに繋がるのではないでしょうか。

エムダブルエス日高 太田デイトレセンター