介護特集

TOWN介護 FEATURE01 群馬県内の高校生の活躍
TOWN介護 FEATURE01

「この町で暮らし続ける」を支える
〜病院・施設・在宅における連携〜 特集:公財)脳血管研究所附属美原記念病院 × 介護老人保健施設アルボース


美原記念病院の理念

院長 当病院は私の父が昭和39年に創設しました。文部省管轄の学術研究法人という団体で、特に脳血管障害に関して、学術的な研究を進めていこうというのが、この病院の始まりです。平成24年に法人制度改革があり、内閣府管轄の公益財団になりました。標榜科は脳神経内科、脳神経外科、循環器内科、リハビリ科、脳卒中・脳神経疾患を中心とした診療科です。病床が4病棟で200床未満の中規模の病院です。
 今、我が国の医療は機能分化が進んでいますが、20万人都市の伊勢崎においては、分化された病院よりも一つの病院の中で、ある疾患に特化した施設完結のやり方がより効果的であろ

うと考えられます。 そういう意味で当施設は急性期の病棟、回復期の病棟があり、関連して在宅復帰支援の老健施設があり、在宅を支える訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所があります。在宅に帰れない場合は、新たな終の棲家としての特養を持っています。ですからこの財団のミッションというのは、脳神経疾患の急性期から在宅までの一貫した医療介護を提供することです。つまり、我々が実践しているのは「やりたい医療」ではなく「求められる医療」です。どんなに急性期をやりたくても、それが地域から求められていなければ意味がありません。

地域包括ケア病床の必要性

院長 では、地域に求められる医療とは何でしょうか。地域包括ケアと言われてから、その内容はずいぶん進化しています。より健康寿命を伸ばし、住み慣れた地域に住み続けるためには、もっと地域住民が当事者意識を持って予防介護に努めなければならないと、発達してきています。さらに本人の意思を尊重しながら、皆で話し合ってケアをしていくACP(アドバンス・ケア・プランニング)が求められるようになりました。つまり住み慣れた地域で過ごすためにはそれに合った医療提供体制、介護提供体制が必要であり、地域から求められる医療を実現するには在宅療養を支援する機能が必要。そこで我々は地域包括ケア病床を設けたのです。
 平成11年までは3分の2が急性期の病棟でした。建物の改装に伴い、急性期機能をより特化するため4分の1に削減し、それ以外を療養病棟にして機能分化を図り、回復期リハビリ病棟、特殊疾患療養病棟を作りました。

 平成24年にはSCU(ストローク・ケア・ユニット)というより高度な急性期機能を追加しました。そして地域から求められる病院として、回復期リハビリ病棟の中に地域包括ケア病床を作ったわけです。地域包括ケア病床の役割は、急性期からの受け入れ、在宅からの受け入れやレスパイトケア、在宅の緊急時の受け入れという機能を持っています。急性期からの受け入れをポストアキュート、在宅や施設にいる人たちが急変した時に受け入れる機能をサブアキュートと言います。実はサブアキュートをより重視するのが、今の世の中の流れです。多くのサブアキュートの患者を取ることに対し、診療報酬上のインセンティブが働くようになります。平成29年度の当院の地域包括ケア病床の実態は、入院経路の4分の3がポストアキュートで、残り4分の1がサブアキュートです。私自身の考えでは、よりサブアキュートの患者さんを受け入れていくべきだと考えています。それが、地域に求められていることだからです。

認知症疾患医療センターの役割

神澤  認知症疾患医療センターは、国のオレンジプランの政策の中で、伊勢崎二次医療圏では例外的に原病院と美原記念病院の二つあります。当院の特色として、やはり学術的なもの、最新鋭の機器を駆使して、確実な診断をすることを一つの大きな柱にしています。同市の人口は20万人ですが、患者さんに対して施設間での連携を行いながら、我々の専門性を発揮して診療することが地域に対する役割であろうと認識しています。
 当センターの体制は、診療担当に美原先生と精神科の先生、PSW(精神保健福祉士)が2名、外部からの相談窓口として臨床心理士、認知症看護認定看護師1名、看護師が1名が付いており、センター長である私にとって恵まれています。検査だけに頼るのではなく、病前の状態を捉えるのが大事で、診察の前からスタッフとの連携を図りながら患者さんの情報を得ることが非常に重要になります。認知症に対してまだ偏見のある地域でもあり、ご家族からは最初は健康診断ということにしてほしいなど、診察までにさまざまな調整が生じます。

ストレスや恐怖を感じさせないよう敷居を低くして、 アクセスよく来院してもらえるよう、スタッフには尽力してもらっています。
 当方の認知症鑑別診断の割合は、やはりアルツハイマー型が多く、軽度認知障害(MCI)、血管性認知症も多く見られます。その他に正常と判断される場合もありますし、それ以外の内科的疾患や精神科的な疾患であったり、すべてがアルツハイマーではなく、薬剤性や水頭症など治せる認知症もあります。それらを見逃さず網羅的にしっかり鑑別していくことが大事です。
 有病率は15%で、市の人口20万人に対し、当センターへのアクセスは800人ほどですからまだまだですね。早期でありながら社会に埋もれている患者さんや早期でも治療しない患者さんが多いということです。さらに開拓しなければいけない分野だと思いますので、チーム医療を柱にして病院、病院外や民生委員も含めて連携していくことがこれから地域に還元していく大事なポイントではないかと考えております。

医療と介護の連携

井上 入退院支援室の体制は看護師1名、ソーシャルワーカー7名で機能しています。昨年から各病棟に退院支援ナースが介入し、医療を含めた退院支援を進めています。今までの退院支援は、社会の一員としての個人で生活している人が入院すると、入院前と退院後に病院スタッフとの関わりがないことで、今までの生活から分断されて「患者」になってしまい、退院後も入院前の生活に戻れず「患者」のままという状況がありました。今行っていることは、入院前の生活歴を踏まえ、退院後に入院前の生活に戻ることを前提として、病院スタッフと在宅スタッフが連携を図りながら患者を「個人」として支援します。元の生活に戻ることができるように、入院中から退院後の生活を想定したサポートが実践され、患者・家族の生活に連続性を保てるようになりました。
 入院時は、課題が発生してからMSW(医療ソーシャルワーカー)が介入するのが普通でしたが、急性期では展開も早く課題を掴むのが難しいなかで、入院した日にスクリーニングを掛けることを徹底し、翌日にはカンファレンスを実施して、課題の原因を抽出し、退院支援の計画を立てて早期の退院に繋げています。リハビリスタッフや看護師も介入するのが通例になり、全員でカンファレンスをしてチームを支援しています。

石森 例えば、脳卒中で緊急搬送されると、その日から急性期リハビリが始まります。その後、麻痺が残り在宅復帰することが難しい方は回復期リハビリ病棟に転床します。ここでADL向上のリハビリを行いますが、全員自立できるわけではなく、家に帰ってから不便が生じる方もいます。 例えば病院ではバリアフリーの環境でトイレに一人で行けていましたが、退院後、

自宅のバリアのある環境でトイレにいけなくなり、生活が混乱することがあります。訪問リハビリは、この時に介入していきます。訪問リハビリでは本人、環境、家族に対してアプローチします。例えばベッドからトイレまで一人で歩けない場合、もちろん本人にリハビリを行いますが、同時に環境に合った車椅子、手すりの必要性などの確認をします。ご家族に対しては車椅子の押し方や介助方法の指導を行っています。
 訪問リハビリは利用しようと思えば何年でも利用することはできるのですが、リハビリ依存という自立とは真逆の状態にならないように、事業所では生活機能が向上したら訪問リハビリを卒業させることも特徴だと思っています。 大塚 老健アルボースの相談室長をしています。当施設は入所の定員が100人、通所リハビリ定員32人で運営しています。在宅復帰・在宅支援を推し進めている超強化型の施設です。入所前に私どもの支援相談員が面接を行い、最初の段階から退所後の在宅のイメージを持っていただくように関わっています。
 老健への入所元と退所先を全国平均と比較してみると、病院から来てまた病院に戻る、つまり病院と老健でキャッチボールしているような状況が全国的に見られるのに対し、アルボースの場合は病院から来た人を在宅に戻し、在宅から来た人をまた在宅に戻すことを実践しています。本来、疾患を発症後、治療して回復したら在宅に戻るという流れの中で、老健に来た人たちをまた病院に戻すというような、川下にある私たち老健から逆流をさせないようにしようと、当施設の施設長も医療を日常的に老健の中で提供するように心がけています。