介護特集

TOWN介護 FEATURE01

これまで緩和ケア診療所「いっぽ」を拠点とし、診療の傍ら、講演活動にも力を注いできた萬田緑平先生がこの度独立され、「緩和ケア萬田診療所」を前橋に開院する運びとなりました。この機会にと、急遽、近隣の訪問看護ステーションが一堂に集まり、萬田先生を囲んで座談会が開催されました。

がん患者さん専門に外来診療・訪問診療を行うクリニック

萬田先生の目指すもの

萬田 私は、がん患者さんの在宅にこだわりたい。施設と比較すると、在宅にはあらゆる苦労が伴いますが、その分やりがいも大きいですから。

 私の目指す最終的な目標は往診です。在宅の訪問診療が始まってから診るのではなく、がんと診断されたら、元気なうちから外来で1年、3年、5年とがん患者さんを診て、通えなくなった人をそのまま家で診てあげたい。がん治療をしなくてもこちらの方が長生きできるよ、楽しいよ、ということを世間に知らせたいのです。

 もともと訪問診療は得意ですが、緩和ケア診療所「いっぽ」の時のように、訪問診療をバリバリやろうとは思っていません。むしろ数を少なくして、外来を中心にやりたい。従業員を雇わずにコンパクトに開業しているから、それが可能ではないかと考えています。外来で長年診て、仲良くなった患者さんだけを看取って、それで成り立っていけるのなら、こんな面白いことはないなと。誰もやっていない、誰も考えていない、時代を20年先取りした訪問診療のあり方を追求して、このようなスタイルになりました。これが、萬田診療所のコンセプトです。

近くの訪問看護に何を求め、どう連携していくか

萬田  「いっぽ」のころは在宅初心者ながら、初めは自分一人で全てをマネジメントしていました。徐々にナースが動けるようになって、最終的に座っているだけでナースが全部仕切ってくれて、ずいぶん楽になりましたね。

 今回はナースを雇わないので、外部のナースとやっていくわけで、自分がケアマネを探していたころの時代にまた戻るわけです。では、どうやっていくかと言うと、例えば夜に「すぐ来てください」と電話が掛かってきても、私がすぐに行くのは非常に難しいので、基本はナースに行ってもらいます。多くの場合は電話でナースに指示を出して対処しますが、これは自分の出番だという緊急時にはもちろん足を運びます。

 ちなみに、「いっぽ」時代から付き合いのある訪問看護ステーションは、気心が知れているので引き続きお願いしようと思っています。今日集まっていただいた中で、「大変だけど一緒にやりたい」という熱意のある訪問看護ステーションがあれば是非。もちろん、他の医師と組んでいると思いますが、そこでは物足りなくて、もっと在宅で粘ってくれる医師がいいと言うのであれば役に立ちますよね。

がん患者さんの最期を「自分らしく、幸せに」

萬田 私のやり方は、家族を説得するのではなく、基本は本人の好きなようにさせてあげようよ。という流れを全面に押し出して、本人が入院したいと言うのなら入院させるし、どんなに苦しい状態でも本人が家に居たいと言うなら居させてあげようという考え方。自分の思いが家族に伝わらなければ辛いですよね。

訪看A 以前、末期がんの患者さんだったのですが、家族の受容ができていない状態で、先生の判断で入院になってしまい、結局入院後に亡くなりました。萬田先生に早く会っていれば、もっと良い方向性を模索できたのではと思いました。

萬田 そういうケースは、よく訪問ナースから聞きますね。

訪看A 本人は自宅が良かったのに、結局奥さんが看られないだろうということで、固めてしまって。

萬田  よくあるパターンですね。

訪看A だからといって、在宅ばかりを勧めるというのもどうなのかと思うのですが。

萬田 在宅押しではなく、本人の好きなようにしてあげようという方向に、どう持って行くかですね。医師頼りではなく、自分たちで乗り越えていく技術を身に付けていかなければならないですね。

訪看B うちは医療保険7割、介護保険3割の割合で動いています。多くの患者さんを診るのも限界があるものですから、保険制度的には1日3回が限度ですが、一人の患者さんにより多く関わって、時間を費やしたいという思いでやらせていただいてます。

萬田 私の在宅にこだわりたいという姿勢と基本は同じですね。この場にいる訪問ナースは皆そういう人たちが来ているのかな。

訪看B  おそらく興味を持つ人たちは、やはり在宅にこだわりたいのではないかと思います。

訪看C 先生は診療所で、がんの治療中の患者さんを診ていく予定はあるのでしょうか?

萬田 緩和ケアというのは、治療中はダメと言うけれど、診るつもりです。なぜなら本人が治療したい時には来ないでしょう。治療したい人はすればいいし、治療しなくてもいいって言う人はしなくていいのだから。本人の好きなようにすればいいと思っています。

訪看C 治療をしながら、「もっと痛みをコントロールできたら楽なのに」と思う時もあります。その辺りを私たちも関わらせていただけたらと思います。

萬田  私やナースが、「こうしたらいいのに」というのが正解ではなくて、基本は本人の自由です。本人の意思に反して、治療なり入院を家族にさせられているのが一番かわいそうだから、そこは何とかしてあげたい。でも、私たちは「家に居たい」と言って、家族に「いいよ」と言われている数少ない人だけを診ているのだから、おいしい方ですよね。おいしい人をさらにおいしい目に合わせてあげるお手伝いをするのが、私たちの仕事です。

緩和ケア 萬田診療所 院長 萬田緑平

<経歴>
  • 平成3年 群馬大学医学部卒業
  • 平成4年4月〜平成20年3月
  •  群馬大学第一外科に所属、県内外の病院外科勤務
  • 平成20年4月〜平成29年3月 緩和ケア診療所・いっぽ勤務
  • 平成29年6月〜 緩和ケア 萬田診療所を開院
<協力>
  • 緩和ケア萬田診療所
  • 前橋市総社町総社1070 TEL 027-289-6655
  • ・訪問看護 ステーションさくら北前橋
  • ・訪問看護 ステーションここね
  • ・訪問看護 ステーション孫の手・前橋
  • ・訪問看護 リハビリテーションあいおい
  • ・GOODグループ 訪問看護ステーション
  • ・訪問看護 ニコットナース