介護特集

TOWN介護 FEATURE01

地域の皆さんを医療の面から支えるために、訪問治療に力を注ぐ「あい太田クリニック」。
高齢化社会のニーズに応え、24時間体制で在宅療養を全力でサポートします。

訪問医療に特化する必要性と広がる今後の可能性

あい太田クリニックについて

野末 訪問診療を主体にして、在宅医療中心のクリニックを展開しています。ここ太田市内でこの形態での開業は私たちだけでした。しかも、常勤医師3名、非常勤医師6名体制で、24時間365日対応ができます。他の診療所は昼間に外来診療をしていますから実質的には難しいですが、私たちは外来の患者さんを極力抑えて、訪問診療に特化しているからそれができるのです。

どのような患者さんを診ていますか

野末 まず、施設に入所中の患者さんが70%、残り30%が個人の患者さんです。全体で330人いますから、約100人が自宅で200人以上が施設ということになります。病気の種類としては、やはり施設では認知症の方が多いですね。脳卒中後の片麻痺の方も多くいますが、私たちが中心に据えているのは末期がんの人です。主に自宅になりますが、330人のうち10人の患者さんはがんの末期で、約60%に当たる6人は1カ月以内に亡くなります。そしてまた新患が加わるので回転が速いです。ご本人との面談も含め、末期がんの方を診ることにやりがいを持ち、相当のエネルギーを注いていることも特徴の1つです。

どんな特色ある診療に取り組んでいますか

野末 最近導入したばかりですが、嚥下内視鏡で飲み込みの検査ができるようになり、患者さんへの使用を始めています。これがうまくいくと、1入院あたり20%の誤嚥性肺炎の発生率が、0.3%に減るくらいの改善が見込まれます。嚥下障害によって食事の量が減ったり、肺炎になるなど状態が悪化して、最終的に亡くなることも少なくありません。嚥下内視鏡を使えば、どんな姿勢で食べたら良いか、その人の嚥下機能がどれくらいあるか、またどんな形態の食事を取ったら良いかなど、いろいろなことがわかります。ただ検査をすればいいというものではなく、結果をどう解決策に結びつけるかが重要で、医師と2名の看護師が勉強のため合宿に行ってきました。かなり質の高いものになるのではと、期待しています。

 足のトータルケアを行っているのも特徴です。自分で病院に行けなくなった方は、足に問題を抱えている方がほどんどです。血流が悪い人もいれば、傷がある人、巻き爪がひどい人もいます。爪は足の下から力がかからないとどんどん巻いていきます。またつま先を浮かせて歩いているとそうなります。

フットケアはある程度勉強すればできることですが、訪問介護ステーションなどは、そこに時間をかける余裕がなく、限られた時間内ではフットケアの優先順位は低いです。ところが私たちの看護師は30分間以上フットケアだけを行います。マッサージをしてむくみを取ったり、爪のケアやカサカサになった皮膚のケア、血流や脚の関節の動きも診ます。必要に応じて専門の靴を企業に作成してもらうこともあります。

 それから、在宅での腹膜透析ですね。腎臓の機能が悪くなると透析という手段で血液中の老廃物を取ります。週3回ほど病院に通う血液透析が圧倒的に多いのですが、腹部に管を入れ、透析液を注入して一定時間置いた後に取り出すという透析方法があり、それを腹膜透析(PD)と言います。透析導入の際、最初に腹膜透析を行うファーストPDに対し、終末期に行うラストPDがあります。私たちは透析を必要とする重篤な患者さんのご自宅へ伺い、腹膜透析の管理をしようとラストPDを始めました。この在宅腹膜透析は、なかなかできるところは少ないと思います。もしかすると全国でも1、2カ所かもしれません。

看護師さんの業務内容や連携手段は

石倉 先生は病気そのものを診るのでこちらは周辺に気を配ります。私たちが初診で伺う際には、まず患者さんの保険情報や、訪問診療に入る前の主治医から診療情報提供書やサマリーなどをいただきます。家族構成や患者さんの特徴、性格、キーパーソンは誰かなども含め、薬局やケアマネが決まっていればそちらへ、訪問看護が入る場合は訪問看護ステーションに必要な情報を送り共有します。ヘルパーさんや訪問看護師さんがいつ来てどうケアするか、食事はできているか、入浴はどうしているかなども、クリニックで把握できるようにしています。看護業務は診療の補助として、採血や点滴、寝たきりの方の褥瘡はないかなどを確認します。痛いところはないか、困っていることはないか質問をして、必要に応じて先生に報告し、指示を仰いで看護するというスタイルをとっています。やはり患者さんの足の状態は意識して診ています。フットケアは喜んでもらえますね。患者さんの「ありがとう」がなによりの言葉です。

これからの訪問診療について

野末 私たちは太田を中心に東は館林、南は熊谷、北は桐生の先まで半径16kmを守備範囲にしています。ご自宅や施設で最期を迎える方は増えていくでしょうから、そのニーズに対応していきたいです。現在、常勤医師は3名ですが最低でも5名には増やしたい。患者数もおそらく2千人くらいに増えると予想しています。訪問診療を行う医師が不足している他の地域にも開設する必要があるかもしれません。将来的には在宅での認知症治療にも取り組んでいきたいです。私たちにもう少しマンパワーが出てきたら、施設でフットケアの講習を行うのもいいですね。施設の医療レベルを上げていくことも、私のやりたいことの1つです。

本誌を通じて介護従事者に伝えたいこと

野末 患者さんの幸せ、それに携わる皆さんの幸せも両立できるように情報交換をして、疲れ果てずに、介護が必要な人たちにいろいろなものを提供できるような環境作りをお願いしたいです。