介護特集

TOWN介護 FEATURE01

平成23年に群馬県より指定を受け、認知症疾患医療センターを開設した医療法人原会原病院。
医師、保健師、精神保健福祉士の3名にお集まりいただき、単科精神科病院の現状と少子高齢化社会を見据えたこれからをインタビュー。現場の声をお届けします。

笑顔でいられる「瞬間」がやはり大切

認知症の専門病院 原病院の特徴について

 当院は、地域のニーズがどちらかというと、認知症の初期よりもかなり進行してからの患者さまが多いという特徴があります。紹介で来られる患者さまの大部分が入院依頼だったり、認知症と身体合併症の両方を有している方など、自宅で看られないということでお引き受けするケースが多いです。

清水 太田や藤岡の方もいらっしゃいました。認知症が進行してしまい、施設では介護することが難しくなって退所するように言われ、ご家族としてもご自宅では看ることができずに、色々な病院をあたったけれど断られてしまったということで、最終的に当院を受診されました。

 認知症は初期が注目されがちですが、現場で困っているのはかなり重度の患者さまへの対応だったりします。現状、受け入れてくれる施設がまだまだ少ないですね。当院では、まずは周辺症状を改善してあげることを目的として、お薬を調整し状態を安定化させた後、介護に結び付けていくということを行っています。認知症の初期であれば、進行を遅らせるお薬がありまして、お薬を早めに導入することによって安定した状態が長く維持できますし、ご家族との和やかな時間も増えると考えられるのですが。

認知症疾患医療センターの役割とは

 大きく分けて5つあります。まずは保健師や精神保健福祉士による専門医療相談です。2つめが鑑別診断および診断に基づく初期対応、3つめが合併症・BPSD(幻覚・妄想・徘徊等)への急性期対応、4つめがかかりつけ医の先生方への研修会の開催、5つめが医療連携協議会の開催、これらを中心に行っています。

上村 当センターは保健師が2名、精神保健福祉士、作業療法士、臨床心理士、センター長で構成されていますが、相談件数がずっと右肩上がりで月に100件以上あり、忙しい状況です。

 相談の内訳も伊勢崎に限らず東毛地区、遠くは神奈川や東京など県外からもあります。

清水 地域包括センターから連絡があり、ご本人を受診させたいが、行きたがらないのでどうすれば上手に受診ができるか、

という相談もありました。その時は健康診断と伝えて、まずは本人に受診することを納得していただきスムーズに受診ができるよう考えたこともあります。

上村 相談に来てくれる方はまだいいです。連絡せずにご自宅にいる潜在的な認知症の患者さまがすごく多いのではと考えています。いかにその方たちを表舞台に連れ出せるか、地域の包括支援センター、民生委員、在宅のケアマネ、そのほか地域の皆さんと協力して医療に結びつけられればと思います。

 おそらく、すべての医者が今後、科にとらわれず認知症を診てゆかなければならない時がきます。その中でも県内13カ所ある認知症疾患医療センターが中核的な役割を担うのですが、やはり主役となるのは地域の先生、開業医の先生方で、どう連携をとっていくかが重要ですね。

少子高齢化社会へ向けての取り組み

 できるだけ早めの受診を促すために、今までは60代から80代の方を中心に診てまいりましたが、今後はもう少し早い段階の50代から60代、場合によっては30代から50代といった一見、認知症とは関係ない世代に対しても介入していこうと、アンチエイジングを含めた講演活動をさせていただいおります。

上村 自分の両親に物忘れが始まった段階で、まだ大丈夫だろうと放っておくと、その間に重症化してしまうケースが結構あるので、30代・40代の方に対しての啓蒙活動もすごく大事だと思うんですよね。

 認知症自体が顕在発症するのは70代・80代ですが、実は始まっているのは40代・50代からなんですね。ですので世代から、やはり健康に対して意識を持っていく必要があります。例えば、高血圧とか糖尿病とか、そういうリスクを減らすだけでも違ってきますので、生活習慣の指導を伝えていきたいですね。

上村 また、認知症の方を介護する人たちのケアも必要じゃないかと考えています。まず、大事なのは認知症になりたくて

なったんじゃないということ。その方の尊厳も大事にしなくてはなりませんね。病気とその方自身を分けて考えないと、暴言を吐いてしまったり、暴力を振るってしまったり、虐待的なこともこれから増えてくると考えられます。そういう意味での啓蒙活動も一緒にやっていく必要がありますね。

 「生きる。その実体は瞬間にしかない」という岡本太郎さんの言葉がありますが、認知症の患者さまにも当てはまって、記憶は失われてしまっても、ご本人が笑顔でいられる瞬間がやはり大切。我々はその笑顔作りに邁進していかなければと思っています。

清水 初診の時はすごく大変そうだった方が、再診で来られた時や入院されて少し落ち着いた時に笑顔が見られたりすると、とてもうれしくなります。

上村 認知症の方は純粋で感情をそのまま表に出してくれるのでわかりやすいです。マイナスな面ばかりでなく、人と人との関わり方でプラスの面も見いだせると思います。仕事としてのやりがいもありますね。

介護予防のような一般向けの活動はありますか

清水  「いきいきサロン」を関連施設4カ所で行っています。地域の高齢者を対象に体操やレクリエーションをした後、みなさんで昼食を召し上がっていただきます。

上村  また近い将来には認知症カフェを始めたいと検討しています。

 どうしても精神科病院は敷居がまだまだ高いイメージがあると思うんですよね。皆様方が少しでも気軽に相談できる場を微力ながら今後とも作っていければと考えております。