介護特集

TOWN介護 FEATURE04

法人設立から20年目を迎えた医療法人 富士たちばなクリニック。介護老人保健施設(老健)の現状と小規模多機能ホームによる地域密着サービスの取り組みや問題点、さらにこれからの施設のあり方や地域連携について、事務長をはじめ、現場で活躍するスタッフのみなさんにディスカッションしていただき、生の声を聞かせてもらいました。

高齢者が暮らしやすい町づくりを目指して チャレンジ&イノベーション

木暮 老健施設はあくまで在宅復帰を目的とした中間施設としての役割があるんですが、現状はどうですか?


豊田 病院で治療が終わった後に、リハビリテーションをしながら在宅復帰の準備をして、3カ月で在宅復帰することが理想ですが、実際、施設に入所するとご家族は利用者さんのいない生活でリズムができてしまうので、いざ3カ月経つころには復帰を延ばしてほしいとご家族から申し出があります。具体的に在宅復帰するのは10人のうち2、3人の割合ですね。6カ月以内で在宅復帰できない方は大抵が次の施設の空きを待っている状態です。特別養護老人ホームだと年単位での待機になるので、当施設に来てからずっと1年いる利用者さんもいます。


木暮 在宅復帰するはずが、入所系サービスの高齢者住宅や住居型有料老人ホームとか、純然たる家に帰れない現状が多いですよね。


豊田 あとは独居だったり、老老介護が増えているのも事実。それで在宅復帰できない方もいます。在宅に帰す人を増やすというのはいろいろと解決しなければならない問題があると思います。


佐藤 申し込みの段階では在宅復帰する目標を必ず抽出していますが、施設に入っている状態がベストではないかとご家族の気持ちが移行していくような感覚を受けることがあります。在宅復帰することにおびえてしまうケースもありますね。「引き続きいてもいいですよ」と言われることが喜びになったり。ただ、制度にのっとっているかといえば、すごく疑問を持ちながらやっています。


豊田 在宅復帰できなくなってしまった人でも外出外泊できるように環境を整備するところまでは頑張ろうと、よくみんなで言っています。外泊が出来なければお昼ご飯を食べにちょっと帰るだけの能力は維持しよう。そこを目標にしています。

佐藤 外泊するための能力維持を目標にリハビリをしている利用者さんもいますね。外出外泊でも十分目標になりうるんですよね。


木暮 病院は退院することが目標ですよね。本来であれば老健施設もその延長なんです。ゴールが在宅復帰でなくちゃいけない。あくまでもこちら側の内情なので、ご家族や本人を酌んでいくとなかなか難しいですが。特別養護老人ホームであればいいですよ。終身として捉えられますから。


豊田 待機で伸ばしている利用者さんで特養の順番が来ても、「お医者さんもいるし、条件が整っていて安心だから移らなくていい」ってご家族が断ってしまうケースもあります。施設としては気に入っていただけてうれしいですけどね。


木暮 医師や看護師、リハビリのセラピスト、管理栄養士、薬剤師を含めた多職種共同の施設サービスがあるのは老健施設だけなので、地域の役割としては重い責任があります。やはりできる限り在宅の支援をできたらということで、在宅復帰の施設というよりも、在宅支援をする施設としてやっていけたらと私は考えていますね。10人のうち2、3人が在宅に帰るなかで、私たちのグループで全員の人をフォローできるわけじゃないですが、選択肢の一つとして小規模多機能タームという施設があります。


下田 小規模多機能ホームは通いと泊まりと訪問のサービスが利用できる施設です。通いの定員が最大で1日15人、泊まりは定員が9人です。通えない日は顔なじみのスタッフがお宅へ伺って掃除や料理をしたり、一日に何度でも訪問できます。使い勝手はすごくいいと思いますね。ただ、登録者は25人という枠があるんですけれど、皆さんが通所を利用したい場合には15人なので、残りの10人はどうしようかと。経営的には25人登録したいですが…。

木暮 単体の泊まり、通い、訪問の3つが合体した小規模多機能ホームは、かゆいところに手が届く介護ができるんですよ。なじみのスタッフとの関係作りは家族側も関わりやすいですし。通所デイサービスと違って月額報酬なので、使い勝手がいい故に毎日通いたいのも当然安良ですが、通所は15人定員なので、そうすると残りの10人は在所サービスに回さなくてはならない。そぅいう変わった仕組みなんです。その上要支援1から要介護5まで利用できるわけで、報酬単価の格差がありすぎるんですよ。

 回数で考えると要介護1の人がデイサービスを週5、6回使うとなると、在宅の限度額がオーバーするんですよ。そうすると月額報酬の小規模多機能ホームなら限度額を気にせず利用できる。たから、要介護度の軽い人で利用回数を増やしたい人は小規模多機能ホームに来たがる傾向があるんです。このあたりの考え方、使われ方が間違っていますね。このシステムはとても難しくて、マネージメント力のある事業所じゃないとできないです。ですからあまり制度にこだわらず、サービスを利用するだけの施設じゃなくていいと思っています。例えば買い物を一緒に付き添ったり、なじみの関係があるからこそできることがあるんですね。そういう部分を小規模多機能ホームでできたらいいなと。在宅復帰の施設じゃなく、在宅支援の施設を作っていくには、小規模多機能ホームやグループホームがあったり、通所デイサービスや通所リハビリ、訪問看護や訪問介護があったりと、それぞれ選択できる在宅支援施設として、私たちのグループは地域づくりをしていこうと思っています。

下田 事務長の新鮮な発案にはいつも関心しています。型にはまってちゃいけないですよね。


木暮 今後、地域づくりをしていきたいというのは南橘地区に限らず、ひとつのコミュニティーを地域ごとに作っていけたらと思っています。前橋市内に核となる施設が何カ所もあれば、その核となる施設と近隣のデイサービスや訪問介護とネットワーク作りをして、地域の人たちが安心して暮らせるような街づくりが必要ではないかと思うんですね。私たちが中心となって使命感を持ってやるべきじゃないかと。そこで雇用を生んだり、新たなサービスが生まれたり、産業にもつながっていくと思っています。自治体や商店と連携しながら、独居老人の買い物支援だとか、サークル活動への参加だったり。地域の人たちはいろんな選択肢があっていいと思います。その中で連携してマネージメントしていくところが老健施設なのかなと考えているんですね。


佐藤 この半径1、2キロ圏内では、近隣の人が「ここに連絡すれば」という意識を持ってくれていると感じます。実際に困ってしまうような相談もありますが。地域の拠点の1つとしてさらに理解が広がるといいですね。


木暮 何かあったらあそこに行ってみよう、聞いてみようと気軽に利用できる施設づくりとネットワーク化した地域づくりを私たちが構築して、行政に仕掛けている法人でありたいなと思っています。

木暮伸晴さん(写真左)
医療法人 富士たちばなクリニック
事務長
地域密着型サービス代表


下田和子さん(写真左から2人目)
グループホーム・小規模多機能ホーム
春らんらん 管理者
(看護師・介護支援専門員)


豊田奈保子さん(写真左から3人目)
介護老人保健施設 創春館
療養棟 部長
(介護支援専門員・介護福祉士)


佐藤宗和さん(写真右)
介護老人保健施設 創春館
支援相談員 副主任
(介護支援専門員・介護福祉士)